社風と企業文化

ボトムアップ型の企業文化


良くも悪くも典型的な日本企業、京都企業に特有の「派手ではないが堅実かつ健全」な社風です。過去は一度配属された部門から異動することはまれで、部門毎に異なる雰囲気がありましたが、昨今は部門間の異動を奨励しており、少しずつ空気が変わってきています。マネジメントはトップダウンではなく、ボトムアップ型の企業文化であり、若手社員が意見を言う場は多々あるため(部課長は基本的に下から上がってきたモノを批評するために存在している)、比較的風通しの良い組織体制と言えます。極端に変な人の割合は低く、技術オリエンテッドな風土があり居心地は悪くありません。社員はややおとなしめですが友好的で、昭和の大家族的な雰囲気を残す会社です。悪く言えば仲良しクラブ的な内向きの指向が強く、保守的でスピード感に欠けるところがあります。社内の雰囲気が比較的のんびりしていることもあり、最近では外部からの専門家を招いて、風土改革を目的とした組織活性の指導を積極的に受けています。


技術を大切にする姿勢


創業時のものづくり、技術を大切にする姿勢は、今の日本の企業の中でも稀有なものがあるでしょう。会社に多くの有識者がいるため、上司が社内で多くの講義を開いて、若手社員が技術を体系的に、幅広く習得できる環境が整備されています。多くの技術系社員は「何かを生み出したい」という志をもって、入社しているため、志や夢を持っている方には、トップクラスのエンジニアとともに働くことができ、毎日が吸収、勉強できる環境になると思います。一方で、漫然と過ごす方には、平均的な働き方自体が苦痛になるかもしれません。



社員を大切にする会社


基本的に社員を大事にする文化があり、これまで正社員を首切りしたことはないそうです。社員年収も一般平均よりかなり高めに設定されています。その一方で、リーマン・ショックの後から女性一般職の採用は激減しており、その不足分を派遣社員・期間従業員や嘱託社員で穴埋めしています。当然、会社としてはリスク回避(景気が上向けば派遣社員、嘱託社員をたくさん補充し、不景気になれば契約を解除すればよい)という意味では仕方がないことかもしれませんが、正社員と派遣社員、嘱託社員では仕事に対するモチベーションは違っており、かつ、有期契約ということもあり、会社側(受け入れ先組織)も真剣に教育する意識が希薄になっていると思います。また、製造業はどこもそうですが、事業部の採算性が悪くなると、技術者の中から使えない順に間接部門へ配置転換が行われます。但し給料に変動はありません。良くも悪くも社員に優しい会社であるため、人員削減はないものの、そうした施策が労働生産性を下げているという側面があります。


社員は真面目で勤勉


村田製作所の社員の特徴は、「真面目で勤勉」の一言に尽きます。人柄も大人しく温厚、派手な人はあまりいなませんが、真面目でクレバーです。仕事では「とにかく頑張れ」というような精神論は言われません。この規模の会社にしてはアットホームな感じが残っている方ですが、部署によってはサバサバしたドラスティックな職場もあるようです。偏差値の高い大学・大学院を卒業した高学歴社員が多いため、人付き合いを苦手とする人も多く、管理職の中には研究者がそのまま昇進してしまった感じも散見されるので、どうしてもマネジメントの面が弱くなるのかもしれません。


高いコンプライアンス意識


非常に遵法意識が強く、決まり事を順守し、規律正しい振る舞いを求める社風があります。法律や社会に背く行為をしたものに対しては、たとえ創業者の親族であっても厳しい処分が与えられています。また、36協定順守や輸出管理規制など、間違っても社員に違法行為を取らせないような仕組み作りが進められています。安全面は過剰とも言えるほどに対策が取られており、社員を大切にする姿勢がよく表れています。


仕事を任せる文化


自由闊達な風土で組織内の風通しは良く、手を上げればやりたい事を仕事にできる可能性は高いです。保守的な面もありますが、若くても仕事をどんどん任せてもらえる風土があります。失敗にも比較的寛容です。ただ、基本的に「出来る人に仕事をさせて、出来ない人にはさせない」傾向があるので、仕事が出来る人ほど、プライベートの時間はなくなります。そして「出来ない」社員の尻を叩く風土もなく、優秀な人に過負荷がかかる悪習があります。また、部門によって仕事の忙しさはかなり異なるように感じられます。


グローバル化の遅れ


グローバルに事業を展開しているとは言うものの、実際には日本人が海外に出向し、海外で売上を上げていることが大半であり、一般的にいうグローバルな会社、事業を展開している企業(多国籍・多様なバックグランウドを有する人材の価値判断により、事業場所・国を問わない経営展開で収益の向上を目指す企業)とは異なり、精神の根底は京都企業に留まっており、良くも悪くも京都の田舎企業です。国内生産比率が中々下がらないことに顕著に表れているように、海外への生産移管は遅々として進んでいません。得意先認定取得に時間をかけすぎており、「石橋をたたいて渡る」企業文化が、悪い方に働いているいい例だと思います。


中途採用者が多い


生え抜き社員のみではなく、転職、中途採用社員も多い会社です。また、キャリア採用者を昇進等で一切差別しないことをアピールしており、事実、かなりの転職者が管理職や役員に昇進しています。新たな価値観、考え方をうまく導入して、電子機器、部品という極めて入れ替わりが激しい業界に適用を図っており、それが成功している会社だと思います。


理系の会社


村田製作所はメーカーであるため、良くも悪くも院卒社員が多くを占める理系の会社です(高卒社員もいます)。すなわち、数字で論理的に説明することを、どんな局面でも強く求められます。また、製品を開発している事業部に強い権限が与えられているため、営業部門の影響力が小さいです。